19036 巻線部品総合試験器はトランスやモータなどの巻線部品に対して、耐圧、絶縁抵抗、巻線抵抗などの従来の電気安全試験にインパルス試験機能を組み合わせた試験器です。AC 5kV/DC 6kVまでの耐電圧試験、DC 5kVまでの絶縁抵抗測定が可能です。4線式直流抵抗測定範囲2mΩ〜2MΩ、パルス試験最大DC6kV。AC/DC耐圧試験、絶縁抵抗、巻線抵抗およびインパルス試験を標準搭載の10チャンネルにそれぞれ割振ることで被測定物への接続の⼯数や試験時間を⼤きく削減し、オプションの外部スキャンボックスを接続することによって40チャンネルまで増設することにより、試験の標準化 も容易化し、プログラム者と作業者を分けることも可能になります。
- 測定技術-耐圧試験
- 測定技術-DC抵抗測定 (DCR)
- 測定技術-コンタクト検査機能
- 測定技術-サブステップ機能 (SUB-Step)
- 測定技術-⼈体保護回路 (GFI)
- インパルス試験原理
- インパルス試験
- アプリケーション
- パネルと接続の説明
フラッシュオーバー検出 Flashover Detection (ARC)
フラッシュオーバーとは絶縁材料の内部あるいは表⾯が⾼電圧によって放電する現象です。被測定物は本来の絶縁耐性が破 壊されることで瞬時もしくは⾮連続的な放電を起こし、製品はアーク放電が発⽣することでダメージを受けることになります。単に漏れ電流を試験するだけではこの不良現象を検出することはできないため、印加電圧や漏れ電流の変化量、変化率による検出が必要です。このため、フラッシュオーバー検出は耐電圧 試験に必要かつ不可⽋な試験項⽬のひとつといえます。
▲ 交流耐圧試験における電気的フラッシュの発生有無の比較図
▲ 交流耐圧試験における電気的フラッシュの発生有無の比較図
直流抵抗(DCR)測定【2端⼦法/4端⼦法】 4-wire Measurement / 2-wire Measurement
2端⼦法/4端⼦法の直流抵抗測定を選択することができます。特許出願中の10チャンネルと4端⼦法測定設計で直流抵抗を測定します。モータやトラン スなどの複数層を持つ巻線製品に対して⾼精度な測定を可能にします。測定範囲は20mΩ〜2MΩです。
スキャナーボックス:
- 4端⼦法測定:A190362 (4端子高電圧試験線付き)
- 2端⼦法測定:A190359 (2端子高電圧試験線付き)
直流抵抗平衡機能 (DCR Balance)
三相巻線モータの直流が不平衡な場合、回転不平衡となり⻑期信頼性に関わる品質不良となります。直流平⾏判定はその最⼤値と最⼩値との差分が 設定範囲を超える場合を不合格とすることで評価できます。モータのような⻑期信頼性が必要な製品に対して品質を補強する試験です。
温度補償機能 (Temperature Compensation)
⼩さな直流抵抗を測定する場合、測定時の温度により測定値が変わることがあります。したがって、温度による影響を⼩さくするため、温度補償機能によって温度に応じた補正をかける必要があります。温度補償係数により直流抵抗値を標準温度時の測定値に変換し、温度による試験への影響を軽減します。
⾼速コンタクトチェック機能 High Speed Contact Check (HSCC)
電気安全試験において回路がオープン状態では不良品であっても良品と判定してしまう危険性があります。また、短絡状態では試験冶具や試験設備への ダメージを与えてしまうため、不良品の早期発⾒は製品や冶具の保護にもつながります。⾼速コンタクトチェック機能は被測定物の回路に正常に接触してい るかどうかを⾼速で確認します。したがって、電圧試験を実施する前の接触検査をより速く⾏うことができ、⾼周波コンタクトチェック(HFCC)およびオープン 短絡検知(OSC︓特許番号254135)などの機能により、巻線が内部コアと接触不良もしくは短絡しているかを検知することができます。
オープン 短絡検知 Open Short Contact (OSC)
オープン短絡検知(OSC︓特許番号254135)などの機能により、巻線が内部コアと接触不良もしくは短絡しているかを検知することができます。オープン短絡検知は試験回路の静電容量に基づいて行われ、試験治具を実際に被試験体に接続したときに許容範囲内になるようにします。試験治具や被試験体に短絡があると,試験回路の静電容量が許容範囲を超えてしまい,短絡と判定されます。
高周波コンタクト検査 High Frequency Contact Check (HFCC)
19036は、ACとDCのHi-potテストモードと高周波コンタクト検査を備えています。高周波コンタクト検査は,オープンショートチェックと似ていますが,より小さな容量値(1pF~100pF)に対してオープンショートチェックを改善するために高い試験周波数を使用します。
被測定物を並列して測定する場合は電流の上限/下限値の設定など明確な基準を設けて判別できなければ、不良品を市場に出荷してしまうことになります。また、不良品と判定された製品をプログラムの終わりまで計測し続けることはプロセスコストの無駄となります。そこで19036のサブステップ機能により並列測定時のシーケンス編集を⾏うことができるため、不良品と判定された製品を次のテストプロセスに進めるかどうかのトリガー条件を設定することができます。
▲ 複数のトランスの配線をテストするイメージ図
19036は⼈体保護回路(GFI)を搭載しており、作業員の安全を確保する機構となっています。 突発的な⼈体感電事故が発⽣した場合にはGFI機能により瞬間的に試験器の出⼒電圧を遮断し、作業員の感電事故を防ぎます。⼈体保護回路は、全帰還電流(i2)と機械の帰還端電流(i1)の比較により、アース/グランドから機械に逆流する電流(iH)の大きさを検出するものであります。
▲ ⼈体保護回路機能イメージ図
インパルス試験とは⾮破壊試験の⼀種であり、低エネルギーのパルス電圧を被測定物に対して⾼速に印加し、標準良品(ゴールデンサンプル)の波形と⽐較、照合することによって合否判定を⾏う試験です。巻線部品のレアーショートやアークあるいは部分放電などの潜在⽋陥を発⾒するのに有効な⽅法です。例えば、層間短絡、コロナ放電などです。また、被検査物の浮遊容量やインダクタンスによって発生する共振波形の発振減衰によって、製品の品質を判断することができます。スイッチがONのとき、被検査物にパルス電圧を印加し、被検査物のリング間の絶縁距離が十分かどうかと被検査物に印加された試験電圧で確認できます。スイッチを切ると、被測定物は本体の浮遊容量と共振し、本体共振波形の減衰状態によって被測定物の良否が判定されます。
▲ パルス試験用等価回路図
▲ パルス試験用等価回路図
面積比較 (Area)
スイッチを入れると被検査物にパルス電圧が印加され、試験回路のコンデンサと共振し、そのピーク電圧で被検査物のループ間の絶縁距離を検出することができます。被検査物のループ間の絶縁距離がパルス試験の電圧に耐えられない場合、ループ間で放電が発生し、共振波形の総面積が減少します。
スイッチを切ると、被検査物は本体の浮遊容量と共振し、本体の共振波形の減衰状態によって被検査物の品質が測定されます。SR波形の減衰は被検査物の品質に影響され、被検査物の品質が悪いほどSR波形の減衰は速くなり、試料の共振波形の総面積に比べ、被検査物の共振波形の総面積は小さくなります。そのため、面積比較により、絶縁距離不足の製品や品質不良の製品を検出できます。
▲ 面積比較イメージ圖
面積差比較 (Differential Area)
測定物にパルス電圧を印加すると、測定物は回路内のコンデンサと共振します。測定物のインダクタンスが試料と異なる場合、測定物の共振周波数も試料の共振周波数と異なることになります。その結果、被測定物の共振波形と試料の共振波形が領域的に重なることがないです。面積差比較は、物体共振波形とサンプル共振波形の重ならない部分の面積の和を算出し、サンプル共振波形の総面積との百分率で比較します。面積比較と併用して、感度に大きな差があるサンプルをスクリーニングするために使用することが推奨されます。
▲ 面積差比較イメージ圖
フラッター検出 (Flutter)
被測定物にパルス電圧を印加し、円間の絶縁距離が不十分であるが絶縁破壊には至っていない場合に、微小な放電(コロナ放電など)が発生します。この小さな放電が放出するエネルギーは、絶縁破壊よりも小さいため、共振波形の総面積にはあまり影響を及ぼさないです。そのため、面積比較で微小放電を検出することは難しいです。フラッター検出は、共振波形の垂直(上下)変動の総和を算出し、被測定物とサンプルの差を比較します。小さな放電が発生すると、共振波形に揺れが生じるため、波形の総縦揺れが大きくなります。そのため、共振波形の上下変動総量の増加から、微小放電の発生を検出することができます。
▲ 小電流放電イメージ図
二次微分 (Laplacian)
コロナ放電などの微小な放電が発生すると、本来滑らかであるべき共振波形に揺れが生じ、共振波形が不均一になります。その結果、共振波形の傾きが急激に変化することになります。二次微分では、共振波形の傾きの最大変化を二次微分演算で検出します。そのため、微小放電による共振波形の急激な傾き変化を二次微分で検出し、パルステスト時に微小放電が発生する不良品を効果的に選別することができます。
波高率 (ΔPeak%)
波高率(Peak Ratio)と測定物のエネルギー損失性能、被測定物のエネルギー損失性能と測定物の品質・Q値に関わります。波高率は、共振波形の3番目と5番目の電圧ピークを自動的に求め、共振波形の5番目の電圧ピークを3番目の電圧ピークで割った割合を計算し、設定の複雑さを軽減して使いやすくしています。被測定物の品質/Qが悪いほど、被測定物の調和波形の減衰は速くなり、ピーク・トゥ・ピーク比は小さくなります。
▲ 波高比と波高差比のイメージ図
測定物の品質が試料より悪い場合や測定物の高調波波形の減衰が試料より速い場合、測定物のピーク比は試料のピーク比より低くなります。波高差比は試料と測定物のピーク・トゥ・ピーク比の差を試料のピーク・トゥ・ピーク比から差し引くことで比較した負の値であります。波高率はエネルギー損失の点でサンプルより性能の劣るものを効果的に選別します。
共振面積比 (ΔResonant Area)
スイッチを切ると被検査物は本体の浮遊容量と共振し、本体の共振波形の減衰状態によって被検査物の品質が測定されます。SR波形の減衰は被検査物の品質に影響され、被検査物の品質が悪いほどSR波形の減衰は速くなり、試料の共振波形の総面積に比べ、被検査物の共振波形の総面積は小さくなります。共振面積比は面積比較とよく似ていますが、被測定物の共振波形とスイッチOFF後の試料の共振波形の総面積差のみを比較する点が異なります。その結果、面積比較よりも共振面積比の方が、品質の悪い製品をより高感度にスクリーニングすることが可能です。
▲ 共振面積比のイメージ図
周波数差比 (Δfr%)
スイッチが閉じると検査物が浮遊容量で共振し、検査物と試料の共振周波数の差から検査物のインダクタンスや浮遊容量を確認することができます。共振周波数はインダクタンスやスプリアス容量に反比例するので、共振周波数が高いほどインダクタンスやスプリアス容量が小さくなります。つまり、共振波形の周波数が低いほど、インダクタンスや浮遊容量が高くなります。周波数差比は、測定物の共振周波数とインダクタンスまたはスプリアス容量の相関を利用して、測定物と試料のインダクタンスまたはスプリアス容量の差を比較するものであります。このため、周波数差比を利用することで、被測定物と試料との感受性の違いやスプリアス容量の違いを検出することができます。
▲ Δfr% と Δ(L*C)% の比較表
▲ 周波数差比イメージ図
インパルス試験比較 (IWT Compare)
三相モータのステータの3つの巻線の差が大きすぎると、モータのロータに回転のアンバランスが生じることがあります。パルステスト比較では、巻線/位相の異なるコイルをクロスコンパイルしてパルステストを行い、巻線/位相の差が大きすぎる製品をスクリーニングすることができます。
▲ パルステストイメージ図
クラッシュ電圧解析モード (IWT BDV Mode)
クラッシュ電圧解析は巻線部品の最大耐圧限界を測定します。 製品開発者は、クラッシュ電圧解析モデルを使用して製品を分析・検討し、弱点を改善することができます。降伏電圧解析モードは、試験電圧を開始電圧(Vstart)から終了電圧(Vend)まで、ステップ(Vstep)の割合で徐々に上昇させます。試験電圧の上昇に伴い、各試験電圧ステップの共振波形と直前の試験電圧ステップの共振波形が比較される。AreaとLaplacianの値が設定された上限値と下限値を超えた場合、被検査体のループ間の絶縁異常が発生したと判断し、前回の試験電圧を被検査体の最大耐圧、すなわち倒壊電圧と判断します。
巻線部品︓Δ/Y結線モータ、ファン、コイル
EV⽤モータやセンサモータなどすべての巻線部品は、⽣産⼯程の品質を確認するために国際規格JB/T 7080によって規定 されているインパルス、耐圧、巻線抵抗試験を⾏う必要があります。19036は10chマルチポートスキャニングでドライブ/センス の4端⼦測定法を採⽤しているため、巻線抵抗を⾼精度かつ効率よく試験することができます。また三相モータも3個を同時に 試験することができます。
巻線部品試験における波高比と周波数差比について
品質/Q比が悪いとエネルギー損失が大きく、熱損失が発生しやすいため、温度上昇により長期間の使用で通常よりも劣化が早くなり、寿命が短くなることがあります。波高比の下限値の割合は、品質/Q値の許容範囲の下限にある製品を用いて開発することができます。
測定する共振波形の共振周波数はインダクタンスとスプリアス容量の影響を受けます。コイルの巻き方のきつさは浮遊容量に影響し、Cpがきついほど高く、緩いほど低くなります。コイルの数やコアのμ値はインダクタンスに影響を与え、コイルの数が多いかコアのμ値が高いほどインダクタンスは高くなり、コイルの数が少ないかコアのμ値が低いほどインダクタンスは低くなります。周波数差比の上限と下限の割合は、インダクタンスとスプリアス容量の許容範囲の上限と下限の範囲にある製品を使用して設定することができます。
▲ 有害因子との関係におけるΔPk%、Δfr%について
△結線モータとY結線モータ (Δ/Y DCR)
今までの試験器ではΔ結線モータとY結線モータの巻線に対して直流抵抗は直接できない課題がありました。19036は巻線抵抗計算機能によって、R1、R2、R3の数値を求めることができます。
最⼤40チャンネル試験
オプションの16チャンネルスキャナーを増設し、最⼤40チャンネルまで拡張することが可能です。各々のチャンネルでH(⾼圧)、L(参考)、OFF(無し)の設定ができます。
スキャナーを増設することによって多ピン製品や少ロット多品種製品試験に適した⽅法を採ることができ、特にセル⽣産⽅式の効率を向上させます。