Chroma ATEは、新エネルギー車のバッテリーシステムやコンポーネントをテストするための8610バッテリーパックパワーHILテストベッドを発表しました。これには、バッテリーモジュール、バッテリー管理システム、および冷却/加熱システムが含まれます。DC電源、バッテリー充放電システム、デジタルメーター、耐圧試験機、および短絡、過電圧保護デバイスなど、さまざまなハードウェアオプションが統合できます。
Chroma 8610バッテリーパックパワーHILテストシステムは、バッテリーモジュールとバッテリーパックの研究開発用として特別に設計されており、リアルタイムのハードウェアシステムとオープンソースのソフトウェアアーキテクチャを統合し、柔軟かつ強力な機能を備えた動的テストシステムを提供しています。実車の走行状況をインポートしての充放電、CAN信号の測定と制御、故障想定条件注入、絶縁抵抗測定、充電スタンドからの充電シミュレーションなどのテストを行うことができます。基本的なこれらの機能にに加えて最も重要な複合シナリオを実行出来ます。自動車の環境において最も重要な複合条件とリスクが最も高い複合運転条件(例:サイクル放電時の通信障害および物理的障害)のシナリオをシミュレーションすることができます。これにより実車でテストすることなくバッテリーパックの詳細な試験が可能となるため、開発効率が大幅に向上します。
Chroma独自の高性能170X0シリーズバッテリー充放電装置を統合した8610システムは、様々な条件下の電気駆動システムの負荷となるバッテリーパックの高速でダイナミックな放電と再充電の動作をシミュレートする事できます。車両試験全体レベルにおいて検証の信頼性が高まります。さらに、テスト中にバッテリーパックから出力された電気エネルギーはChroma充放電装置によってグリッドにフィードバックされるため、エネルギー効率が高まるほか、コストの削減にも役立ちます。
自動車開発プロセスと機能安全テストの要件に対応
▲ 自動車のV字モデル開発プロセス
Chroma 8610バッテリーパックパワーレベルHILテストシステムは、従来の信号レベルでの機能検査のほか、実際の電力動作も検証できます。8610システムは、従来の信号レベルのHILソリューションと比べ、EV高電圧コンポーネントのテスト範囲をより完全にカバーしています。自動車基準におけるVモデル開発プロセスの検証、妥当性確認プロセス(右側)における、バッテリーパック、バッテリーモジュール、バッテリー管理システムおよび放熱・冷却システムなどのコンポーネントに関するより多くの検証ができるようになります。バッテリーパックシステムレベルの機能とさまざまな複合条件のテストで問題を早期に発見し、実車の試験前にエラーを修復できるため、開発コストが効果的に削減されるほか、テスト効率が向上します。
さまざまな自動車の実際の複雑な動作をカバーするため、近年、自動車業界はISO 26262(自動車用機能安全規格)を自動車メーカーとそのサプライヤーが製品開発において遵守すべき基準として精力的に推進してきました。ISO 26262は製品システムからハードウェアとソフトウェアまでをカバーし、遵守すべき安全規格を示しています(機能の安全規格→技術の安全規格→ハードウェアの安全規格→ソフトウェアの安全規格)。テストおよび検証の部分では、自動車レベルでの正確性と故障カバレッジの有効性を確保するため、自動車安全水準(ASIL)のレベルに関わらず、HILと故障注入試験を実施することが求められています。
8610の統合された故障注入ユニット(Fault Injection Unit)は、テスト対象デバイス(DUT)のシステムに対し、さまざまな制御信号および通信信号に任意のオープン・ショート故障テストを実施します。また、動的放電、絶縁抵抗変化、静的充電など、自動車の動作シミュレーションを組み合わせ、自動車において最も重要かつ故障リスクが最も高い複合操作のシナリオをシミュレーションして検証する事ができます。実車でなくてもバッテリーパックの詳細な試験が可能となるため、ISO 26262のプロセスにおける故障注入テストが向上し、ASIL(自動車安全水準)などの認証取得に役立ちます。
リアルタイム制御、データ収集、通信、保護機能を実現
Chroma 8610システムは過電流保護、過電圧保護、低電圧保護、短絡保護、温度監視などのアラーム機能と保護機構を備えています。制御ソフトウェアはオープンアーキテクチャで、リアルタイムシステム、電力装置、測定モジュール、シミュレーションモデルを同期的に組み合わせ、バッテリーパックの自動車レベルのReal-time動的テストを実施できます。
通信インターフェースは一般的に使用されているCAN、CAN FD、LINなどのインターフェースのプロトコルに対応しているほか、CAN通信で必要となるDBCファイルをロードする機能を備えています。手動テストでは、柔軟性の高い編集と修正を実現するマンマシンインターフェース機能を備え、テスト項目とプロセスを継続的に最適化できます。自動テストでは、ASAM XILをインターフェース上位のテストソフトウェアとし、自動テストプログラムの完了後にシステムの各監視パラメータを記録し、その後の分析に使用することができます。
テストインターフェースでは、データの収集時間を設定できます。リアルタイムで各パラメータの値(車速、電圧、電流、入力電力、出力電力、効率、温度、走行モードなど)が表示されるほか、テスト中やテスト後にグラフィカルなレポートを作成するための各パラメータのデータを得る事ができます。
また、独立したPLCシステムにより、システムソフトウェアや電力装置の動作状況をリアルタイムで監視し、エラーが発生した場合は、直ちに充放電動作を停止し、製品と装置のシステムを瞬時に保護します。
高い柔軟性と直感的なマンマシン操作インターフェース
マンマシン操作インターフェース(UI Interface)は、テストシステムにおいて非常に重要な部分で、研究開発テスト担当者の操作の利便性と効率に直接影響します。Chroma 8610システムは計画で必要となる各機能をカスタマイズできるほか、さまざまな計器や装置を統合し、制御およびテストプログラムの開発環境を構築できます。これによって、テストプログラムの作成・修正ができるようになるほか、ユーザ自身でUIを編集・修正できます。主な機能:
装置およびテスト対象のパラメータ表示画面
バッテリーの充放電状態、電圧、電流、電力、電量、保護アラーム、絶縁レベルなどの変化を数値、計器、プロット表示の形式でリアルタイムにアップデートします
テストプロジェクトで設定が必要となる制御パラメータ画面
バッテリー充放電の起動と停止、充放電電圧、電流、電力設定、絶縁抵抗測定の起動、故障注入信号の選択、テスト条件の選択など。デジタル、ドラッグ、選択スイッチの方式で制御値を変更できます。
▲ バッテリーの充放電設定と監視・操作インターフェース
▲ 故障注入機能操作インターフェース
▲ Hi-Potと絶縁抵抗測定操作インターフェース
▲ Dynamic Battery Pack Discharge and Regeneration Control User Interface
自動車レベルの動的充放電と複合条件への応用
Chroma 170X0シリーズのバッテリー充放電装置と組み合わせると、8610は、動力システムによるバッテリーパックの負荷と再充電の動作をシミュレーションできるようになります。また、Altair Activate自動車モデルとさまざまなSimulink Model-Basedのリアルタイム数学モデルのインポートに対応しており、NEDCやWLTPなどの規格によるDriving Cycleに従い、自動車バッテリーの動的な充放電性能を直接検証する事ができます。一般的なバッテリーテストシステムのように、前もって実車走行時の充放電記録を取得し、ロードして再生する必要がなく、バッテリーパックの動的テストを直接リアルタイムで実現できます。さらに、信号の測定、制御、故障注入、絶縁抵抗測定、充電スタンドの充電シミュレーションなどさまざまなテスト機能の柔軟性の高い構成と組み合わせが可能となり、複合条件を実現することで、テスト対象のより詳細な試験を実施できます。以下は実車の路面状況をロードした充放電動作に故障注入した際の充電動作変動のシミュレーション例です。
各種テスト項目
単一テスト機能
(1) 定電流・定電圧充放電テスト
(2) 自動車Driving Cycleサイクル放電
(3) 任意の充放電Pattern再現
(4) 電圧測定・電圧差検出
(5) 電流測定・電流差検出
(6) パワーオン/オフの制御ロジックとタイミング(リレーセルフチェック機構の確認)
(7) 高電圧インターロック機構
(8) バッテリー保護機能のタイミング確認
(9) 絶縁抵抗測定
(10) 交直流耐電圧テスト
(11) 動的リーク電流
(12) GB/T、CHAdeMO、CCS交直流充電と相互運用性テスト
複合テスト機能
(1) 自動車のDriving Cycleサイクル放電時の故障注入検出および絶縁・耐電圧レベルの確認
(2) 任意の放電と再充電Patternの再現時の故障注入検出および絶縁・耐電圧レベルの確認
(3) 故障注入の電量計算および各保護機能への影響
(4) 交直流インターフェースの充電時の故障注入検出および絶縁・耐電圧レベルの確認
(5) バッテリー電量、セル、総電圧、故障信号、充電エネルギーの変化の関係をテスト
(6) 満充電校正機構テスト