19311シリーズ バッテリーセルサージテスターは鉛蓄電池セルの正極板と負極板との間の絶縁品質を試験するための試験器です。電解質注入前のセルに高電圧サージ/インパルスを印加します。出力電圧は最大6kVであり、4端子測定と200MHzのサンプリングレートによって高精度な測定を実現しました。また19311は目的に合わせて1チャンネル機(19311)と10チャンネル機(19311-10)のモデルを取り揃えています。
19311-10は10チャンネル搭載で効率よくテストすることができ、1台のユニットで、最大9個のバッテリーセル試験が可能です。外部スキャナ(A190362)と接続することで最大24個のバッテリーセル試験用に25チャンネルまで拡張できます。19311-10による複数セル同時テストによって試験時間は大幅に短縮し、生産効率の向上に寄与します。
電解液注入前の鉛蓄電池セルに対する高電圧サージは正極板と負極板との間の絶縁距離および絶縁品質、セパレータ品質、短絡の有無を識別する試験です。このサージ試験により鉛蓄電池の製造ラインにおける不良率を低減し、鉛蓄電池セルの絶縁品質を高めることができます。
19311シリーズは共振波形から絶縁品質を分析します。判定方法はArea(波形面積比較)、Diff-Area(波形差分面積比較)、Flutter(波形フラッター検出)、Laplacian(波形ラプラシアン検出)、V1(1次ピーク測定)、V3(3次ピーク測定)、Peak Ratio、およびΔPeak%の8種類があります。
サージテスト (Surge Test)
サージテストは電解液注入前の鉛蓄電池セル対して行われる非破壊試験です。短時間かつ低エネルギーのインパルス電圧を印加し、19311/19311-10の内部インダクタと鉛蓄電池セルを共振させる試験です。19311/19311-10はその共振波形あるいはテスト波形とサンプル波形を比較することによって、被測定物の鉛蓄電池セルが良好なセルか否かを判定します。電解液注入前の鉛蓄電池セルに高電圧サージテストを行う主な目的は正極板と負極板との間の絶縁距離が十分にあるかどうか、正極板と負極板との間にセパレータ(絶縁体)が存在するかどうかを確認し、欠陥の鉛蓄電池セルを検出することで鉛蓄電池の製造の不良率を減少させることができます。共振波形から読み取れるピーク電圧の減衰過程はバッテリーセルの絶縁品質評価に使用することができます。
8種類の波形判定方法
波形面積比較(Area)Areaは鉛蓄電池セルの絶縁状態を評価する試験で、テスト波形とサンプル波形の合計面積の差を比較し、正極板と負極板との間の絶縁特性や、セパレータが正極板と負極板との間に存在するか否かを試験します。試験波形の面積が試料波形の面積よりも小さくなる時、電界強度/電圧が十分に高い状態で正極板と負極板との間の絶縁性が悪い、正極板と負極板との絶縁距離が短い、正と負の間のセパレータプレートが存在しないなどの原因によって、放電によるエネルギーの消費が発生していることを示しています。 |
波形差分面積比較(Differential Area)Differential Areaは鉛蓄電池セルの静電容量を評価する試験で、テスト波形とサンプル波形の差分を比較し、セルの静電容量の差を確認することができます。セルの容量が大きいほど、共振波形の周波数は低くなるため、鉛蓄電池セルの静電容量が小さい場合には共振周波数が高くなります。 |
フラッター検出(Flutter)Flutterはプローブが鉛蓄電池セルに接触/非接触を評価する試験で、評価に使用する関数は微分方程式を用いて計算した波形の合計値です。プローブが鉛蓄電池セルに接触していない場合、静電容量は欠陥のない静電容量よりもはるかに小さいため、印加がオフになると共振周波数が非常に高くなり、Flutterの値が大きくなります。したがって、Flutterはプローブが電池セルに接触しているかどうかを検出することができます。 |
ラプラシアン検出(Laplacian)Laplacianは鉛蓄電池セルの微小放電を検出する試験で、2次微分方程式を用い、サージテスト中の微小放電による試験波形の急激な変化を検出することができます。 |
1次ピーク測定(V1)V1は鉛蓄電池セルの絶縁性を評価する試験で、共振波形の1番目のピーク電圧を測定します。絶縁性が悪い場合やセパレータが正負のプレートの間に存在しない時、電界強度/電圧が十分に高い場合に放電が発生するため、放出されたエネルギー分だけ、第1ピーク(V1)は合格品よりも小さくなります。
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3次ピーク測定(V3)V3は第1次ピーク測定と同じく鉛蓄電池セルの絶縁性を評価する試験で、共振波形の3番目のピーク電圧を測定します。ピーク測定の原理は同じで、試験する鉛蓄電池セルの絶縁品質が良好でない場合、エネルギー損失が大きいため、ピーク電圧はより小さくなります。 |
ピークレシオ(Peak Ratio)Peak Ratioは鉛蓄電セルの絶縁性を評価する試験で、共振波形の5番目のピーク電圧(V5)と3番目のピーク電圧(V3)の比であるピークレシオを使用して、鉛蓄電池セルの正負のプレートの間にあるセパレータの絶縁品質を確認することができます。絶縁性が悪い場合や並列抵抗(Rp)が小さい場合は、エネルギー損失が大きいため、5番目のピーク電圧が小さくなります。したがって、不良品のピーク比は合格品のピーク比よりも小さくなります。 |
ΔPeak %ΔPeak%は鉛蓄電池セルの絶縁性を評価する試験で、テスト波形とサンプル波形のピーク比の差を比較することで、サンプル波形に類似した絶縁品質を持つ製品の選別に使用できます。試験電池セルの絶縁品質とサンプル電池セルの絶縁品質が同じ場合、試験波形のピーク比とサンプル波形のピーク比も同じであるため、ΔPeak%は0%になります。一方、試験電池セルの絶縁品質がサンプル電池セルの絶縁品質よりも悪い場合、試験波形のピーク比がサンプル波形のピーク比よりも小さいため、ΔPeak%は負の値になります。 |
その他機能
コンタクトチェック(Contact Check)
コンタクトチェック機能は周波数の差によって被測定物が接続されているかどうかを確認する機能です。鉛蓄電池セルが非接続状態になると、接続された状態の静電容量よりもはるかに静電容量が小さくなることによって、共振周波数が非常に高くなるため、周波数の差を測定することで被測定物の接続状況を確認することができます。コンタクトチェックの感度を任意に調整することができ、それぞれの試験に応じた精度でコンタクトチェックを行うことができます.
ブレイクダウン電圧モード(B.D.V)
19311/19311-10には分析用のブレイクダウン電圧モードがあり、開始電圧と終了電圧を設定できます。試験の昇圧を開始して、Area、Laplacian、Peak Ratioの値がバッテリーセルの耐圧性能を超過しないかどうか確認することができます。このモードを使用しバッテリーセルに印加する電圧を分析することによって、生産ライン向けのサージテストの試験電圧の最適な値を設定するのに非常に役立ちます。
10チャンネル試験(オプションで25チャンネルまで拡張可能)
19311-10は1台につき10チャンネル搭載しています。1テストシーケンス最大9個のセル(最大)をテストできます。また、オプションのスキャンボックス(A190362)を接続することで25チャンネルに増設、1テストシーケンス最大24個のセルをテストできます。
スクリーンショット/データエクスポート機能
本体のボタン操作により、ディスプレイに表示されている画面のスクリーンショットを取ることができます。このデータはUSBドライブに保存もできます。テスト結果も保存でき、ファイル形式はCSVです。