急速充電器の量産に直面する技術課題と改善策

Nov-24-2023

電源 EV・PHV バッテリーテスト

EV車運転不安な要因を軽減するために、①EVのバッテリー容量増加につれて航続距離の向上と②直流急速充電ステーションの設置が必須となってきています。現在の直流充電規格には、欧米のCCSやNACS、日本のCHAdeMO、中国のGB/Tなどがあり、充電コネクタ外観の違いに加え、使用される通信プロトコルも異なります。充電器の内部には、AC-DC電源モジュール、充電コントローラー、通信モジュール、ヒューマン・マシン・インターフェース、DCメーター、サーキットブレーカー、漏電モニター、安全保護回路などが含まれます。充電効率評価試験の効率化だけでなく、生産ラインでの製品品質向上も重要な課題となります。

直流充電器の自動検査システム(Automatic Test System, ATS)
生産ライン出荷(End Of Line, EOL)検査

Chromaは長年にわたる車載充電&急速充電器評価の経験に基づき、出荷検査に自動検査システム(ATS)を適用したDC急速充電器に関する5つの重要な技術的課題と解決策をまとめました。

① : 充電インタフェースと通信プロトコル規格

EVに充電コネクタを差し込むと、接続が検出すると通信プロトコル認証の動作が開始されます。充電準備状態、充電開始状態、充電終了状態において、充電器通信制御装置(SECC)とEV通信制御装置(EVCC)間の通信に異常(タイムアウト、データ形式認識異常、異常処理プロセス、タイムスタンプ異常など)があれば、充電動作は中断されます。そのため、自動試験システム(ATS)は電気自動車の通信をシミュレートする機能を持たなければならないです。充電器の保護機能を検証するために、意図的に異常動作を設定することもできます。さらに、ATSはEV充電器をシミュレートする必要があり、電気試験の要件を満たし、電子ロック、温度モニタリング、ハイパワー・サーキット・ブレーカー、放熱機能を備え、試験プロセスの安全性を確保する仕様でなければならないです。試験システムは、モジュール式で交換可能なEVシミュレーターと充電ステーションを使用することが推奨され、生産ラインの異常トラブルによる長時間の試験中断を避けるため、迅速に交換可能です。また、異なる規格の製品を試験したり、将来のニーズに合わせて拡張可能のも利点です。


▲ 図一 試験シナリオ
 

さらに、EVシミュレータには充電電力曲線(図2など)をロードする機能を備えています。バッテリシミュレータと一緒に使用することで、DC EVSEの応答速度と精度をリアルタイムの充電電流変化にて検証することが可能です


▲ 図二 充電効率曲線 (Source: P3 Charging Index – p3-group.com)

② : マルチコネクタ持ち充電器への検査機能

各EVメーカーはそれぞれのDC充電規格を採用するため、充電器メーカーは現在CCSやCHAdeMO規格、さらにはACの普通充電器など、複数のDC充電器を搭載した製品を発売しています。このような充電器製品では、試験システムの構成上、異なる規格の充電をシミュレータが必要となり、試験工程が複雑になります。また、複数のコネクタを順番に試験する場合、所要時間が長くなります。複数のコネクタを同時に試験する場合はさらに構築上の工夫が必要です。そのため、Chroma ATSでは、異なるインターフェースや複数の電気自動車の充電を同時にシミュレートできるように作られました。こうすることで、異なるプロトコルの充電器とEV間の同期通信をテストし、出力状態を確認することが可能になります。特に複数のEVが同時に充電電流を要求した場合に、充電ステーション内部の出力分配機能が誤動作や保護を引き起こさないことの確認することができます。また、各コネクタの出力電圧/電流/Whの精度を同時にモニタリングすることができ、生産ラインのテスト時間を短縮することができます。

③ : 安全規格検証と保護機能

急速充電器における重要な保護機能は出力過電圧・過電流、接地・絶縁異常、非常停止、過温度、電源インレット異常などとなります。異常状態のシミュレーション経由で評価しなければならない項目でもあります。例として充電器の絶縁試験にはバッテリーと車体間のインピーダンス変化をモニタリングする必要があります。異なる通信段階で、出力DC+またはDC-を接地ループに接続し、充電器の絶縁検出機能が正常かどうかを確認することで可能な試験ですが、常に充電器と車を用意うすることは困難のため、Chroma検査システムは実データによりのシミュレーションが可能となり、試験の難易度を下げることができます。 また、システムに組み込む際には、リレーや抵抗器が破損しにくいように耐電圧・耐電流仕様の適切なものを選定する必要があります。特にバッテリシミュレータの内部Yコンデンサーの容量が大きすぎると、絶縁監視機能試験に影響を与えたり、誤報による試験中断の原因となることがあるので、注意が必要です。


▲ 図三 絶縁抵抗検査

④ : 電源モジュール検証

充電ステーションはEVから電流と電圧の指令を受け、内部の電源モジュールが系統からの交流電力を変換してバッテリーを充電します。充電出力パラメータの仕様精度を検証するために、CVモードまたはCCモードに設定可能なバッテリシミュレータを統合する必要があります。出力電力は20kWから400kWの範囲であるため、エネルギー回収装置を使用することが推奨されます。充電電力を電力網に戻して再利用することで、充電試験中の消費電力を節約し、工場の周囲温度を制御することができます。さらに、充電器のV-to-G機能という将来的な要求を満たすために、充電と放電が可能な双方向バッテリーシミュレータを選択することを推奨します。充電器の入電は、グリッド・シミュレーション電源から供給され、電圧と周波数の仕様内で適切に動作することを検証する必要があります。例えば、SAE-J1772やUL2231-2では充電器が損傷しないこと、または保護モードにスムーズに入ることができること評価するために、電圧ディップ試験、電圧遮断試験、電圧変動試験、高調波イミュニティ試験などの試験をしないといけないです。


▲ 図四 プログラマブルグリッドシミュレータにて作成した波形
 

充電器はまた、待機時の消費電力、力率、充電効率の仕様をテストする必要があり、テストシステム(ATS)の電力計は、高い測定精度(<0.2%)、さらにはmWレベルの電力分解能を満たす必要があります。同時に、より柔軟なアプリケーションのために、異なる測定モード(電力積分)とスマートレンジ機能を持つことが推奨されます。充電ステーションにはさらに装置の最大電力容量を増やす傾向があるため、試験装置の拡張性はとても重要となります。また、将来の通信プロトコルのアップグレード能力と、後続の生産ライン向けでも使用可能の試験システムでしたら大幅にコストを削減することができます。


▲ 図五 DC充電器検査システムの拡張性

⑤ : 生産ラインのシステム統合性

また、充電器生産ラインの出荷前試験ステーションは、自動化ラインのPLC(Programmable Logic Controller)と通信を行い、試験対象物がステーションに到着して位置が特定できてから、PLCが試験継続の指示を出すフローでないといけないです。工場運営の安全状態や防火レベルを確認する必要もあります。また、MES(製造実行システム)で前ステーションの試験状況や結果を確認し、試験を開始するかどうかを判断する必要があります。生産効率や試験報告書の作成効率を高めたいため、製品のシリアル番号をMESにアップロードして管理し、試験結果や生産履歴に必要なデータを生成して分析します。さらに、生産ラインに対応するテストプログラム(TP)を自動的にダウンロードし、異なるモデルのテストを管理し、人的ミスの可能性を回避することができます。最後に、PLC、MES、ATS間の手順転送に注意を払い、責任分担表を明確に定義し、異なるユニットの責任を明確に帰属させる必要があります。

生産ラインにおける出荷前試験システムは、各分野の異なる技術を統合し、関連する経験を積み重ね、円滑に発展させる必要があります。この記事で述べた5つの技術的課題と解決策は、充電器オペレーターがEOLテストを計画する際の参考になれば幸いです。Chroma自動試験システムで、製品の安全性と品質を確保し、ユーザーの満足度を高めることができます。Chromaはすでに、EV充電器、車載充電器、ドライバー、バッテリーパックの試験ソリューションを提供しています。

 

參考文獻:P3 Charging Index Report 07/22 – Comparison of the fast charging capability of various electric vehicles – P3 group (p3-group.com)